液晶テレビの消費電力と視野角

昨日sofmapでシャープの42型のAQUOSが20Wで駆動してますと誤解しかねないすごい店頭デモがあってびっくりした.カタログを見る限りチューナーの消費電力が30Wなのでそっちを表示してるか,この商品の標準的な消費電力の220Wを表示しようとして3桁目が壊れてるかのどっちかなんだけど.

で,液晶テレビの消費電力を下げるために視野角を下げろというひどいことを言ってる人がいて全然直す気配もない.
液晶テレビの進歩の方向 市民のための環境学ガイド
超低炭素化技術 市民のための環境学ガイド

この人の主張は簡単.

  • 液晶テレビの視野角がVAやIPSの場合には178度など,絶対に見るはずのない角度になっている.
  • TNなどの視野角(160°程度)で通常の使用には十分なのに,無駄に広い視野角はバックライトの光を誰も見ない方向に放出していて無駄だ

なんつーか,この人が文字しか読まない人間だってのはわかった.と言う感じ.
まず,業界の事情で視野角の定義が非現実的だという事をこの人は知らない(が,店頭で画面をちゃんと見ればわかる).ちなみに,現在標準的に使われている視野角の定義はコントラスト比10:1が確保できる角度.文字しか表示しない時代に作った定義が映像を表示する今も業界の事情*1で温存されている.
この定義は,今の正面でのコントラストが3000:1とか低くても1000:1だから,その状態から300倍とか100倍コントラスト比が悪化した角度と言うことになる*2.つまり,視野角として表示されている角度のずっと手前から色が変わったり,黒が浮いたり,ガンマが狂ったりする.(今これを書いているMacBookなんかガンマを保存できる視野角は20°もないんじゃなかろうか)

つまり,通常の使用シーンでありえる角度(140-150度前後)で,顕著な画質の変化を抑えるためには細工を施したVAやIPSが必要で,そうすると,今の視野角の定義だと175°以上の非常識な角度になると言うからくり.ちなみに,光源を工夫して正面にしかあまり光が出ないように工夫しても,原理的には視野角は暗所で測定するはずだから,覆いをつけて完全に光をシャットダウンしない限りコントラスト比は変わらないので,パネルを劣化させない限り視野角は変わらない.

さらに,この人は液晶パネルが光を吸収しかしないと言うのをほんとのところでは理解していない.視野角が狭いと言うのは結局のところ光源からの光を無駄に通すか,信号通りに通せないかでしかない.つまり,横から見えないからと言ってその光は正面の光に再利用されているわけではなく偏光板に吸収されて熱に変わっているだけ.つまり,無駄.TNの方が消費電力効率がいいとするとそれは視野角ではなく開口率とか最大透過率が高いおかげ.

まとめると

  • 正面から70°くらいの角度から見て画質の低下を抑えるようとすると,必然的に視野角の値は175°以上の非常識な値になる
  • 視野角が狭いからと言って光が有効利用されているわけではないし,逆に,光を正面に有効活用しても視野角は狭くならない
  • 一番悪いのはこういう誤解を振りまくだめすぎる視野角の定義.でも,世界的にもう戻れないと思う.

追記

まだ言ってるあるよ(必要なとき、ところ、ことだけ 市民のための環境学ガイド).視野角の今の定義じゃ狭くしても省エネにならないって,いい加減誰か指摘してあげろよ.

*1:スペックをよく見せたいとか,今はそんなでもないけどVAが困るとか

*2:最近TNの視野角が170°台に突入したのは元のコントラスト比が向上したからなんじゃないかと乱暴に思ってたりするが,違うかも