転売屋とは何か?

転売屋disはただの感情論 - Togetter
経済学の専門的な教育を受けていない自分でも,議論が混乱してると断言できる.
まず,転売屋が何をしているのかというのを理解しないといけない.それが,問題かどうかというのは個々人の倫理観の問題になるとしても.

上の議論に参加してる人も需要曲線と供給曲線が交差するところで,市場価格が決まるというあたりうまではおぼろげに覚えているらしい.
まず,需要曲線というのはなんだろうか?基本的には,ある商品にあなたならいくらまで出すかという意見の集合だ.同様に,供給曲線はある値段ならいくら売りに出すかという意見の集合だ.販売価格が高ければ大量に作りたくなるというのは理解できるとして,工業製品ならば大量に作れば普通値段下がるだろうと思うわけだが,とりあえず,よくある供給曲線の形で議論することにするとして,これを図にすると下の図の左のようになる.

普通の工業製品は一物一価なので,つまり,普通はある商品には一つの値段しか設定できないので(二つ値段を設定しようと思っても,安い方をみんな購入するから設定できない),需要曲線と供給曲線の交点に価格が落ち着くことになる.この価格が均衡価格or市場価格と呼ばれるものになる.
この時点での分配を考えると需要曲線と均衡価格の間は全部購入した人の「心理的な」利得になっていて,均衡価格と供給曲線の間は,供給者の利益になってる.

ここに,転売屋が登場するとどうなるか?同じ図の右のようになる.転売屋は均衡価格で購入して,「1個ずつ」オークションで売れる人間に売る.オークションで買う人間は自分が払ってもかすかに利得が残る値段では応札するから,均衡価格で買えば得られたはずの利得を失うが,購入によっていくばくかの利得を得ている.理想的には個々人が,個々人の払える値段を払って購入することになるので,需要曲線と均衡価格の間から転売に必要だったコストを差し引いた分が,お金の形で転売屋に渡ることになる.
結果としては需要曲線も供給曲線も変わらずに,分配のみが変わる.つまり,心理的な利得として購入者に分配されていた物が,お金として転売屋に流れる.また,理想的には供給者の利潤は全く変わらない.転売屋が儲けていることそれ自体を批判するというのは,俺が均衡価格で購入できれば儲かったはずの利益を返せと言う宣言にほかならない.1円でも安い調達価格を求める転売屋と何が違うのか私には理解できないが,違う考え方をする人もいるかもしれない.

市場の仕組みは残念ながらこうなっているので,普通に売るのでは均衡価格と需要曲線の間の利得は購入者が儲かったと喜ぶか,転売屋にかすめ取られるかのいずれかになってしまう.
転売屋を防止する方策は大別すると二つある.

  • なんらかの方法で,転売コストを引き上げる(逆に,ネットオークションなどによって転売コストがかなり下がったということが,転売屋というのがここまで見える存在になった原因の一つでもある)
  • 1物1価ではなく複数価格にすることで,転売屋に行くはずだった利益を供給者に分配する

前者は単純なので,後者について説明すると,販売者を何らかの形で分割できれば同じ商品に複数の価格を設定できる.複数の価格を設定することが出来れば,転売屋に行くはずだった均衡価格と需要曲線の間の利得の大半を,供給者の利潤として現金化できる.
分割の手段はたとえば,

  • 地域(日本向けDVDとかなんでこんなに高いんでしょう?)
  • 時間(初回特典付きBDとかなんでこんなに高いんでしょう? or 航空券を出発日に買おうとするとすごい値段とられますよねえ)
  • セグメンテーション(レクサスCTとプリウスって何が違うんでしょう?)

などがあって,多分もっといろいろあるはず.

というわけで,まとめると,転売屋の利益がどこから出てきているのかは明確で,不当な利益ではない.そして,転売屋に遭遇したときは自分の需要曲線をじっくり見つめて損のないように行動すればよろしいんじゃないでしょうかと思う.
まあ,自分もPT2争奪戦では転売屋に殺意を覚えたけど,結局買えたし.

追記

あと,思いだしたけど,カタログとかで値段を出さない(=客を見て値段を決める)というのはこの分割を見せない知恵でもある.こうすることで,値段を表に出す場合と比べて商品を高く売ることが出来る.