博士就職難

客観的に就職難かと言われるとそんなことはない.でも,就職に困る人はけっこういるし自分もその一人.

で,博士就職難話の鉄板切り返し「そんなに優秀なら自分で起業しろよ」 - 発声練習を読んだあとに,大学の博士課程の就職状況がなんかに似てるよなあと思ってふと思いついたのが,将棋の奨励会.構造はほぼ同じ.奨励会の出口がプロ棋士であるのと同程度に,博士課程の本来の出口はアカデミックポスト.プロ棋士になれる人数が制限されているのと同程度にアカデミックポストの数も限られている.うだうだと浪人を続けてようとも年齢制限で強制的に退出させられると言う構造も近い.どうせならアカデミックポストも奨励会のように26歳程度で引導を渡して欲しいものだが.

博士課程に純粋培養で行った人間が就職するってのは,奨励会からプロに上がれそうにないなとわかって,就職しようという状況に近い.将棋やってたから頭いいんでしょうとか,論理的思考が養われてますよねとか言われても,もう将棋は趣味としてでしか指せないんですよで終了.最初のうちはいろいろあきらめきれずにコンピュータ将棋を作っている会社とかをうっかり探してしまうかも知れない.普通の会社に就職するなんて今まで将棋に費やした時間はなんなんだろうかと疑問に思って次に進むのに時間がかかる人がいても驚かない.が,日本はそういう時間を許す習慣がない.
つまり,1社か2社受けただけで就職活動をあきらめる人ってのは,面接で撃たれ弱いってのじゃなくて,将棋に関連する会社を一通り受けて落ちたあとにどうすればいいのかわからない元奨励会員だと考えればいい.能力の問題とは別.こういう時本人は生きている意味がわからなくなっている.目的の会社に就職できないならのたれ死んでもいいかなとうっすらと考えていたりする.

企業は企業で羽生はあんなに優秀なのに何でおまえはそんなんなんだと思っているかも知れない.でも,優秀な奨励会員だったらプロ棋士になるでしょう?普通.優秀じゃないからここにいるんだよボケと叫びたいに違いない.面接で優秀さをアピールしろと言われても,優秀じゃないことが完膚無きまでに証明されたからここに座ってるわけで,そんなこと言われても困る.

まあ,将棋は100年経ってもルールは変わらないだろうけど,博士の場合にはコンピューターゲーム並に人気のあるテーマが移り変わるから一緒にするなよと言えばそうなのかも知れない.WC3が死ぬほど強いけどプロにはなれなかったはどこへ就職すればいいのでしょうくらいに考えた方が気が楽になるのかな.学費も時間も戻ってこないけど.